ポリウレタン防振材とは
ポリウレタン防振材の特徴・用途、防振の仕組み、天然ゴムとの比較、ゲッツナーのポリウレタン防振材の特長などについてご紹介します。
ポリウレタンの特徴・用途
ポリウレタンは1930年代にドイツで実用化されたプラスチック素材の一種。「ウレタン結合を持つ高分子化合物」を意味します。石油を主な原料として合成され、合成ゴムや合成繊維などとして使われています。
ポリウレタンに発泡剤を加えたウレタンフォーム(慣用的に「ポリウレタン」の「ポリ」は省略されます)も、そのようなポリウレタン素材のひとつ。マットなどに使用する柔らかい軟質ウレタンフォームのほか、断熱材などとして使われる硬質ウレタンフォーム、その中間的な性質を持ち衝撃吸収材などとして活用される半硬質ウレタンフォームなどがあります。
その特性の違いは、セルの構造から生まれます。軟質ウレタンフォームでは気泡がつながった「オープンセル構造」、硬質ウレタンフォームでは気泡が互いに独立した「クローズドセル構造」、半硬質ウレタンフォームでは両者を組み合わせた「混合セル構造」となっています。化学構造を細かく調整しやすく、目的に合わせた性質を生み出しやすい点がポリウレタンの大きな特徴です。
ポリウレタンの用途は幅広く、塗料や接着剤、断熱材のほか、バンパーをはじめとした自動車用部品など、日常のさまざまな場面で活躍しています。ワールドカップで使用されるサッカーボールも以前は天然素材である牛革でできていましたが、雨で重くなるのが難点でした。そこで現在では、どんな天候でも安定した性能を発揮するウレタンフォーム製パネルが使用されています。
なお、ゲッツナーでは「クローズドセル構造」および「混合セル構造」のポリウレタン防振材を取り扱っており、さらにそれらは通常の使用条件では加水分解しない特性を有しています。
気泡の連結状態で性能が変化
軟質ウレタンフォーム:マットなど
硬質ウレタンフォーム:断熱材など
半硬質ウレタンフォーム:衝撃吸収材など
ポリウレタンによる防振の仕組み
そんなポリウレタンは、防振材としても非常に優れた特性を発揮します。その秘密は、ポリウレタンに含まれる無数の泡。ポリウレタンに外部から振動が加わると、それぞれの気泡内で空気による摩擦抵抗が生じます。振動のエネルギーが熱エネルギーへと変換されることにより、防振効果を得ることができるのです。
振動対策には発生源での防振(発生源対策)と受振側での防振(受振側での対策)の2つの方法があります。前者は振動の発生源となるモーターや列車を防振材で弾性支持するもの。鉄道の軌道部に使われる防振材もこちらのタイプです。後者は建物や装置など、振動の侵入を防ぎたい対象を弾性的に遮断するもの。ビルなどの基礎防振がこちらのタイプです。性能調整と成形の自由度が高いポリウレタンは、どちらの場面でも幅広く活用されています。
振動エネルギーを熱エネルギーに変換
ポリウレタンと天然ゴムの比較
ポリウレタンは、天然素材のゴムとよく比較されます。両者はどこが違うのでしょうか?
防振材として使用される場合には、過酷な条件下に置かれるケースが少なくありません。そのため、耐久性の違いが素材選択の重要なポイントとなります。天然ゴムはゴムの木の樹液を主成分としており、一般的に油やグリースで膨潤することに加え、紫外線やオゾンによって劣化する特性があります。それに対し、ポリウレタンは油やグリースに対する耐久性を持つだけでなく、紫外線やオゾンに対しても高い耐久性があります。ゴム製品の中にも耐久性を高めたものがありますが、一般的にはポリウレタンのほうが化学的に安定しているため、耐候性と耐薬品性に優れているといえます。
また防振材は、実際にどのような振動に対処するかに応じて適切なばね定数を設定する必要があります。その際、設計上の重要なポイントになるのが防振材の厚み。この点についても、ポリウレタンは硬さを細かく調整できるため、目的に応じた最適な防振特性を持たせやすいという利点があります。
ゲッツナーのポリウレタン防振材の特長
ゲッツナーのSylomer®(シロマー)は、混合セル構造体を採用したポリウレタン防振材です。1975年の発売以来、すでに40年以上の実績を誇ります。もともと50年以上の耐久性を想定して開発された製品ですが、たとえばドイツ・ミュンヘン地下鉄の軌道に敷設された防振材は29年経過後も仕様書に要求されている性能を維持しています。
また、Sylomer®(シロマー)は弾性係数の異なる素材を10種類以上ラインアップし、形状と厚みを調整することで荷重条件に応じた最適な防振性能を設計できます。天然ゴムで同等の防振性能を実現するためには、Sylomer®(シロマー)よりも厚みを持たせる必要があります。
ゲッツナーでは、Sylomer®(シロマー)のほかにもクローズドセル構造体のSylodyn®(シロディン)とダンパー性能を高めたSylodamp®(シロダンプ)をラインアップ。特性の異なる3つの素材で振動対策を総合的にサポートします。また、スペインのAMC社と協業して吊型防振材を開発するなど、国際的な事業展開を背景に、ポリウレタン防振材のパイオニアとして先進のノウハウを幅広く蓄積してきました。
振動・騒音に悩まされる住まいや職場を快適なスペースに変える建築分野はもちろん、高度な振動対策が不可欠な産業機械分野、さらには沿線環境やライフサイクルコストの管理が厳しく問われる鉄道分野まで――。ゲッツナーの振動対策ソリューションは、皆さまの快適な暮らしを支え続けています。
複合ビルにおけるゲッツナーの防振システムの例
連絡先
„私たちにとって、新しいジョブとは常に、新しいより良いソリューションを見つけるための試みです“Hideki Uryu, Head of Tokyo Office
„Sylomer® および Sylodyn® は、正しく使用すれば、それによる改善を感じることのできる素材です“Toshinori Nakagawa, プロジェクトエンジニア